水野FUKUOKA法律事務所

20260731付みんなで大家さん報告書を読んだ感想

0 はじめに

いわゆる不動産クラウドファンディングで2000億とも言われる多額の資金を集めたとされる「みんなで大家さん」で、償還遅延や配当の遅配が問題になって久しい。
そのような中、みんなで大家さんの運営母体である都市綜研インベストファンド株式会社から、事業参加者保護及び事業継続に関する基本報告書という書面が発出された。筆者はこれを入手して読んでみたが、不可解な点が散見された。そこで、筆者の感想を以下にまとめることとする。

1 減損会計に関するミスリーディング

まず、報告書では、「本報告書に記載する会計上の評価額又は減損損失は、企業会計基準に基づき認識される会計上の評価であり、対象不動産の市場価値又は将来的な売却価格を直接示すものではありません。 したがって、会計上の評価額と対象不動産の経済的価値又は将来の換価可能性とは、必ずしも一致するものではありません。」という旨が繰り返し述べられている。これは、確かに、教科書的な定義という意味ではその通りである。しかしながら、極めてミスリーディングな記載である。
減損とは、ある財産(または財産のグループ)から将来得られるキャッシュフローが、帳簿価格を著しく下回っていると判断される場合に、帳簿価格を適切な金額まで切り下げることをいう。「将来得られるキャッシュフロー」とは、例えば不動産で言えば、他人に貸して賃料を得るとか、値上がりして売却するといった方法により現金を得るということであり、要は「この財産は金にならないから、いま計上している金額だとハリボテになってしまうので、切り下げなさい」ということである。
そうである以上、不動産について減損損失を計上したということは、ざっくり言うとその不動産が思ったより金にならないことが判明したという意味であるため、将来的な売却についても、暗い影を落としていることは否定できないわけである。
報告書の記載は言葉遊びの感があり、「減損で見た目は目減りしたように見えるけど、あくまで会計上の数字の問題だから大丈夫」というように読めてしまう点はミスリーディングと言うほかない。

2 減損損失とそれに伴う債務超過

ところが実際には、23頁をみると、当期純損失が約2983億計上され、純資産額が令和7年3月期には約100億円だったのが、令和8年3月には、一気に約2880億円の債務超過に転落している。その損失の主たる原因は、減損損失の計上によるものと思われる(経常損失が約190億円であるため、特別損失に分類される減損損失は約2790億と推定される)ものの、本文中には、損失の費目について十分な説明はない。報告書は投資家に対する説明責任をくどいくらいに強調しているのに、肝心の数字に関する具体的な説明がないというのは、なんともちぐはぐな話である。さらに、どの不動産についてどういう判断の下にいくら減損損失を計上したのか、その明細については何ら触れられていない。
一般論として、債務超過は、上場企業であれば上場廃止に、それどころか、破産手続開始申立の理由になり得る。しかも、不特法上、債務超過は営業取消事由になりうることから、みんなで大家さんにとっては事業継続のための生命線として、債務超過の可及的速やかな解消が必要な筈である。にもかかわらず、報告書には、これからどうやって債務超過を解消するのかについて、具体的なビジョンが何一つ示されていない。「当社及びグループ全体の事業基盤を維持・再構築し、将来にわたり資金を創出できる体制を回復することが不可欠である」というが、これでは何も言っていないに等しい。
しかも、令和8年3月期末時点で、総資産は約390億円であり、ということはどう考えても現金預金の残高は同額を下回っているはずである。しかし、同社は、約2000億円を投資家から集めたとされており、これらは将来的には償還を要するものである。手許に390億円未満の現金しかない状態で、どうやって今後2000億円(+配当金)を払うというのか。これについても、具体的な説明はない。
これは筆者の推測であるが、減損損失の計上についてはギリギリまでせめぎ合いがあったものの、ついに監査法人が、計上しなければ適正意見を監査意見として出せないと突っぱねられて、進退窮まりやむなく計上したのではなかろうか。そして3000億近い特別損失と債務超過の情報が出れば、さらなる集団訴訟や取り付け騒ぎに発展することを懸念し、その場しのぎの報告書をとりあえず出して、事態の沈静化を一時的にせよ図っているように思えてならない。

3 言及のない差押え範囲の変動

しかも、説明責任を強調しつつ、大事な点についての説明がごっそり抜け落ちている。それは、会社財産についての差押え範囲の変動である。
筆者はここ数ヶ月、月次報告を毎月読み比べてきていたところであるが、みんなで大家さんに対する差押えは、着実に進行している。
特に重要なものを挙げると、みんなで大家さん宗右衛門町の土地については、グループの主要財産であると言われているところ、令和8年7月以降、新たに大阪国税局による約1.27億円の差押えと、大阪中央府税事務所による約1200万円の差押えが発生している。これは令和8年度の国税・地方税を滞納していることが理由のようであるが、以前の登記を見ると、滞納は固定資産税などにも及び、令和6年頃から税金の滞納が続いていることがわかる。つまり、税金すら払えない状況が長期間継続しているのである。
また、筆者が特に注目しているのは、債権に対する差押えである。例えば、14頁を見ると、日本駐車場メンテナンス株式会社からの賃貸料について、福岡県水巻町が固定資産税の保全のために差し押さえているとある。のみならず、「株式会社サンティア、株式会社丸協組、及び日本駐車場メンテナンス株式会社からの賃貸料に対する債権差押」「株式会社サンティア、和数寄ホテルズ&リゾーツ株式会社、及び日本駐車場メンテナンス株式会社からの賃貸料に対する債権差押」が、一般債権者によってなされているとの記載もある(20頁)。またこれらはル号事件であるから仮差押えではなく本差押えであり、執行雑事件ヲ号も記載されていることから、譲渡命令や転付命令の申立がなされていることも推測される。
言うまでもなく、みんなで大家さんは、不動産の賃料から得られる収益を投資家に分配するスキームである。その賃料収入自体が差し押さえられているのであれば、事業自体が立ちゆかなくなることは容易に想像がつく話である。
しかしながら、これらについては、淡々と事実が羅列してあるのみで、何一つ説明がない。
これで説明責任を果たすなどと、よく言えたものだ。

4 本当に必要な情報が何一つ書かれていない

このように、読む人が読めば、実質的な説明は何一つなされていないことが明らかなのであるが、これでもリテラシーのない人の目はごまかせると、報告書の作成者は踏んでいるのかもしれない。
筆者としては、最低限、以下の情報を開示すべきと思われる。
(1)今期において減損損失を計上することとなった理由、判断過程の詳細
(2)どの財産について、いくら減損損失を計上し、現在の帳簿価格はいくらなのか
(3)約2800億円の債務超過を解消するために、具体的にどのような方策を考えているのか
(4)みんなで大家さんのビジネスモデルの中核である賃料債権が差し押さえられていることについて、どのような対応を行うのか
(5)みんなで大家さん宗右衛門町の土地売却によるキャッシュの確保と言っていたが、多数の租税債権その他の債権に基づく差押えをどのように処理するつもりなのか
(6)租税の滞納を解消する見込みや、納税の原資をどこに見いだすのか
これらをきちんと説明してこそ、真に説明責任を果たしたと言えるのであるし、投資家の側もリテラシーを持って、こうした指摘を続けていかなくては、回収など夢の又夢である。
X(Twitter)共有&フォローお願いします!

お問い合わせは、LINE友だち追加が便利!
友だち追加

事務所ホームページ https://mizunolaw.web.fc2.com/index.html

刑事事件特設サイト https://mfuklocriminaldiffence.com/

医療事件特設サイト https://mfuklomedical.com/

離婚事件特設サイト https://mfuklorikon.com/

弁護士ドットコム https://www.bengo4.com/fukuoka/a_4013…

弁護士ドットコム 相続事件特集 https://www.bengo4-souzoku.com/office…

ノラネコ弁護士直伝 刑事弁護Ⅰ 捜査弁護: 持続可能な刑事弁護であるために  好評発売中!

下記をクリックして、是非買ってね!

ノラネコ研究所 医療編1 ヒポクラテスの頭痛医道審議会における医師・歯科医師懲戒処分の実証研究 好評発売中!

下記をクリックして、是非買ってね!

YouTube動画集

チャンネル「吾輩は弁護士である ~福岡発 ノラネコ弁護士水野遼の法律噛みつき講座~」はこちら

【児相警察まっしぐら】子どもに顔面ケーキの代償【やめよう児童虐待 子どもの権利を守る弁護士が徹底解説】

【平和以前の問題】同志社国際高等学校辺野古基地妨害船事故調査報告書を読む【子どもを政治利用するな】

【裁判所をぐるぐる】栃木県上三川町闇バイト強盗殺人事件を例に考える 少年事件弁護の知られざる舞台裏【シビアなスケジュールと重い手続】

【「安全」に金を惜しむことの愚行】磐越道事故と損保の沼【元損保弁徹底解説】

【そんなうまい話があるか?!】グローバル闇バイト【リテラシーなきテクノロジーの落とし穴】

【黙秘するぞ】出房拒否とは【さあ籠城だ】

【リアルウシジマくん】闇金?に生徒の個人情報を売り渡した高校教師  従業員のプライベートな悩みが不祥事につながる前に【不調を見逃すな】

【法治国家に対する挑戦】執行官刺される【真面目に家賃を払う善良な一般市民が馬鹿を見ないために】

【SSR来る】初接見遅延と福岡県警を提訴 当番弁護士、交通権侵害を主張【当番弁護士】

【果てしなき寂寥感】みんなで大家さんの伊賀忍者キングダムに行ってきた【投資対象はこの目で確認せよ】

【司法修習最後の落とし穴】二回試験の苦労話【最後の難関】

【監査しろよ・・・】フローレンス問題【補助金の不正利用はあったのか?】

【退職代行】モームリに強制捜査 何が問題なのか?【人生の一大事を2万円で済ませる愚行】

ジャングリア行ってみたシリーズ

ジャングリア行ってみたpart1 恐怖!灼熱の駐車場地獄

ジャングリア行ってみたpart2 圧倒的虚無

ジャングリア行ってみたpart3 灼熱の行軍

ジャングリア行ってみたpart4 そして雨は残酷に

ジャングリア行ってみたpart5 しょぼすぎるアトラクションに隠された真実

ジャングリア行ってみたpart6(完) ああジャングリアよ永遠に https://youtu.be/2VLe8Izht0g

【参政党の政策読んでみた】 1~7 総集編

【衝撃事件】池袋サンシャインシティ アディーレ法律事務所における殺人事件 事件報道の感想【弁護士事務所のセキュリティの盲点】

【勝手に出すな】会長声明ってなんだ【偏った思想の垂れ流し】

【司法試験受験生必見】司法試験直前!弁護士徹底対談!この時期に大事なこと/試験当日に注意すべきこととは?

【ナルシズム】K元弁護士の発信に対する感想【男性嫌悪】

【なぜこうなった】新潟県弁護士会元副会長による横領疑惑について【ニュースの行間を解説】

【家なき子】リースバックの落とし穴 うまい話にはウラがある【自己責任】

【衝撃】裁判官インサイダー疑惑【それはバレるだろう】

【そらバレますわ】裁判官インサイダー疑惑 裁判編【エリート裁判官のかかる不可解な経済的苦境】

ヤバい事務所に気をつけろ!

Part.1~Part.4

Part.1 ヤバい事務所のヤバすぎる実像

Part.2 日本よ、これがヤバい事務所だ!

Part.3 今日からできる!ヤバい事務所の見分け方 ホームページはかく語りき

Part.4(完) 間違ってヤバい事務所に入ってしまったら? 辞めることに一片の躊躇無し!!!

ヤバい事務所に気をつけろ!2

   • 【法科大学院生 司法修習生 若手弁護士必見】 弁護士の現実とは⁉現役弁護士3人が忖度なしで話し合う座談会!(エントラストチャンネルゲスト出演)

前のページに戻る