離婚・家庭問題について相談をお考えの方へ
我が国も,昔のような家同士のしがらみがなくなり,離婚は珍しいことではなくなってきました。統計上,離婚件数は,結婚後数年と,20年以上の所にピークがあるとも言われています。離婚は人生の再出発として,前向きに捉えることも増えてきました。
離婚に際しては,そもそも相手が離婚に応じるかどうかという問題に加え,お金の話や,子どもがいる場合には子どもの問題も避けて通れません。特に,少子化が進む我が国では,親権や面会交流を巡って深刻な対立に発展することもしばしばです。
当事務所では,夫側,妻側を問わず,離婚相談をお受けしています。また,丁寧に依頼者の話に耳を傾けること,争点を的確に整理して,早期の解決を目指すことを心がけています。
ここでは、離婚などの家事事件に関して、一般的な手続の流れや、よくある疑問などを掲載しています。
全般
- 手続の流れ
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- Q.夫(妻)との離婚を検討していますが、相手が離婚に同意してくれるかどうか微妙で、他にも細かい条件で揉めてしまうのではないかと心配です。どのような流れで手続が進んでいくのでしょうか。
- A.一般的には、①裁判外での交渉 ②調停 ③訴訟という順番で手続が進んでいきます。多くの事案は、裁判外での交渉または調停で解決しており、訴訟になることはさほど多くありません。
裁判外での交渉
日本の法律では、夫婦双方が離婚に合意し、離婚届を作成して提出しさえすれば、離婚が成立することになっています。このことは、日本人であれば当然のように考えられていますが、外国の法制度をみてみると、日本は離婚の手続が最もシンプルな部類に入ります。
このため、相手が離婚自体には積極的であり、それ以外の条件(詳しくはこちらをご覧下さい)についても、大きな言い分の違いがない場合には、裁判外の交渉により、離婚を成立させることが可能です。
この場合、後々のトラブルを防ぐため、重要な点については、離婚協議書で詳しく取り決めを行います。また、公正証書を作成することもあります。公正証書を作成することのメリットや注意点については、こちらをご覧下さい。調停
裁判外での交渉では折り合いがつかない場合、家庭裁判所に調停を起こしていくことになります。法律上、いきなり訴訟を提起することはできず、まずは調停をしましょう、という仕組みになっています。
調停は、簡単に言うと、裁判所を間に挟んだ形での話し合いです。当事者同士では、弁護士が代理人としてついていた場合でも、感情的な点などからなかなか合意に至らない場合もありますが、裁判所(実際には、調停委員)が間に入ることによって、そうしたわだかまりが解消され、合意に至ると言うこともしばしばです。
離婚全体の9割以上が、協議離婚もしくは調停離婚によって成立しています。
調停の手続について、詳しくはこちら(*現在作成中)をご覧下さい。
調停委員については、こちら(*現在作成中)をご覧下さい。訴訟
調停は、裁判所における手続ではありますが、あくまで話し合いのため、一方が頑として離婚に応じない場合や、不貞行為を否定するなど、慰謝料の金額などでどうしても折り合いがつかない場合には、調停による解決は不可能ということで調停は終了になります。この場合、離婚をしたい側から、家庭裁判所に訴訟を提起する必要があります。
訴訟を提起した場合、訴訟の中で離婚を前提とする和解をすることもありますが、最後まで当事者の言い分が平行線をたどる場合には、最終的には判決になります。この場合、離婚が認められるかどうかは、法律上の離婚原因があることが、証拠によって証明されているかどうかで決まります。
離婚原因については、こちら(*現在作成中)をご覧下さい。
- 弁護士に依頼するメリット
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- Q.夫との離婚を検討していますが、弁護士に依頼すると、夫が感情的になりそうで不安です。弁護士に依頼した方がいいでしょうか。
- A.ご自身で対応されることには様々な意味で限界があります。適正な条件で離婚するためにも、弁護士に依頼されることをおすすめいたします。
自分で対応することの大変さ
どんな交渉ごとでも、自分の事件を自ら交渉するというのは、弁護士でもなかなか精神的な負担が大きいものです。まして、離婚の場合、これに加えて、ご自身で対応される際の精神的負担を増大させる要素がたくさんあります。
まず、見合い結婚や政略結婚等でない限り、結婚するときは相手のことが好きだから結婚するわけであり、当然、相手のよいところばかりに目がいっているものです。しかし、ひとたび離婚を決意するようになると、相手の悪いところばかりが目につき、かつての姿と比べることにより、その落差に失望するというのはよくあることです。こうした状況で、まともに離婚の交渉をすることは困難です。
また、妻から離婚を切り出された場合、普通に仕事をしている夫であれば、やはり弁護士に相談の上、事件を依頼することが多いといえます。そうなると、こちらも弁護士を代理人として依頼しておかなければ、素人とプロボクサーが喧嘩するような状態になってしまいます。そうであれば、最初から弁護士に依頼しておいた方が、安心して事件に対応することができます。弁護士に依頼するとかえって揉める?
近年、いわゆるモラルハラスメントを理由とする離婚が増加していますが、こうした事案の場合、夫が妻を完全になめきっており(もちろん、逆のパターンもあります)、ご自身で交渉しようとしても聞く耳を持たない、ということは珍しくありません。しかし、弁護士が代理人につくことにより、そうした夫の態度が一変するということもしばしばです。
また、一般的によくある不安として、逆上した夫が実力行使に出るなどの懸念をされる方もいらっしゃいますが、こちらについては、むしろご自身だけで進めていく方がリスクが高いとも考えられる上、場合によっては、警察に相談したり、DVシェルターを活用したりするなど、弁護士に依頼した方が、適切な対処法を実践できることが多いといえます。離婚の条件は適正か
離婚の際には、養育費や財産分与など、細かい条件を取り決めることになりますが、いくらくらいの養育費が適正なのか、財産分与の対象となる財産はどこまでか、など、専門的な知識を要する分野が少なくありません。このため、適正な条件で離婚するためにも、専門家である弁護士の見解を踏まえた上で、離婚の交渉を行っていくことが不可欠であるといえます。
非弁業者に注意
最近、一部の行政書士など、弁護士でない者が、「弁護士に依頼すると調停になるなどしてかえって揉めるから、離婚は行政書士に任せた方がよい」などと宣伝している事例が見受けられます。
しかし、弁護士以外の者が、離婚の交渉を行うことは違法であり、行政書士もその例外ではありません。行政書士は、調停手続に代理人として参加することができないため、そうした方便を用いて依頼させようとしているのです。
こうした行為は違法であり、また弁護士に頼むよりもかえって高くつくこともありますので、十分、注意して下さい。
もちろん、ほとんどの行政書士の方は、こうした違法行為は行っておらず、あくまで一部の非弁業者が行っているに過ぎないため、この点は誤解しないようにして下さい。
- 公正証書
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- Q.妻から離婚を切り出されました。離婚すること自体は問題ないのですが、妻の代理人弁護士から、離婚の合意について、公正証書を作成することを提案されています。どのような点に注意したらよいでしょうか。
- A.支払が滞った際に、すぐに差押えなどの強制執行をされるリスクがあります。また、公証人は公正証書の内容が妥当であるかどうかについてアドバイスしてくれるわけではありませんので、離婚の条件が適正であるかどうか検討するためにも、早期に弁護士に依頼されることをおすすめいたします。
公正証書を作る意味
離婚に際して、公正証書を作成することがありますが、その一番の目的は、養育費などのお金の支払いを約束するに際して、回収を容易にするということにあります。
通常の離婚協議書で合意をしただけであれば、その後に養育費が払われなくなった場合、強制的に支払をさせるためには、民事訴訟を起こして判決をもらう必要があります。これに対して、公正証書で養育費の支払いを合意している場合、訴訟を提起することなく、直ちに強制執行に取りかかることができてしまいます。このため、裁判外で離婚を行う場合であっても、養育費や財産分与の支払を受ける側としては、確実に支払ってもらうために、公正証書を作成することを提案することが多いのです。差押えのリスク
夫婦であれば、相手の勤務先を知っていることが通常でしょうから、差押えをする際には、サラリーマンや公務員であれば、勤務先の給与に対して行うことがまず検討されます。他にも、相手の銀行口座を把握していれば、預金に対する差押えをすることもありえます。
とりわけ、給与に対する差押えがされてしまうと、給与の一部が強制的に取り上げられてしまうと言うだけにとどまらず、勤務先にも少なからぬ迷惑をかけてしまうことになりかねません。このため、特に支払う側としては、注意する必要があります。調停や訴訟で解決した場合も、すぐに強制執行できる
とはいえ、裁判外で解決せずに調停に移行し、調停で解決した場合でも、調停の条項で養育費の支払いなどを定めた場合には、公正証書を作成した場合と同様に、不払いがあった場合には、改めて訴訟を提起することなく、強制執行をすることが可能です。訴訟になり、訴訟の中で和解をした場合や、判決が出た場合も同様です。
公証人は内容まで関知しない
公正証書は、当事者双方が公証役場に赴き、公証人(検察官や裁判官OBが就任することが通常です)の前で内容を確認しながら作成するものです。実際には、事前に草案を公証人に送っておき、公証人が形式的な点についてチェックをした上で作成に入ることが通常です。
もっとも、公証人は、あくまで形式的な点についてしかチェックをしないため、養育費の金額が妥当であるかどうか、といった内容面について、当事者にアドバイスをしてくれることはありません。このため、離婚の条件が適正であるかどうかを判断するには、やはり弁護士に相談の上、交渉についても弁護士に依頼した方がよいといえます。
- よくある争点
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- Q.夫(妻)との離婚を検討しています。離婚は揉めやすいときいていますが、どういった点が争点となるのでしょうか。
- A.一般的には、大きく分けて①離婚自体 ②子ども ③お金 の面で争いになることが考えられます。
離婚自体
相手が離婚すること自体には問題ないと考えている場合や、不貞の動かぬ証拠があり、訴訟をした場合に離婚が認められることが明らかと思われる場合には、離婚自体が大きな争点となることはそれほど考えられませんが、価値観の相違や性格の不一致を主な離婚原因として主張する場合で、婚姻関係が破綻しているといえるかどうかが微妙な場合や、相手が不貞を否定しており、決定的な証拠に乏しい場合などは、離婚すること自体について争いとなることが十分考えられます。また、当初は離婚すること自体には反対していなかったのが、途中から翻意して、「やはり離婚はしたくない」などと態度を変えてくることもしばしばありますし、「離婚には応じるが、財産は一円もやらない」などと言われている場合には、実質的には離婚自体が争点となっているとみた方がよいと思われます。
子ども
未成年の子どもがいる場合は、親権や養育費など、子どもを巡る条件が争点となり得ます。我が国では、家事や育児の大半を妻が担っている家庭がまだまだ多いことなどから、親権が争いになった場合には、やはり母親である妻に認められることが多いといえます。このため、父親が親権者となることを希望している場合には、その方が子どもの福祉にかなうと言うことを丁寧に主張・立証していく必要があります。反対に、妻が家庭を顧みず、子育てもほとんどしなかったというような場合や、子どもがそれなりの年齢に達していて、父親と暮らすことを強く希望している場合などは、父親が親権者となる見込みも相当程度出てくるため、親権を巡る争いが長期化することもあり得ます。
親権をとることができなかった場合に備えて、面会交流の条件を充実させることも重要といえます。もっとも、面会交流については、具体的な実施方法や頻度などについて、工夫が必要となる場面が多々あります。お金
離婚が揉める原因の大半はお金です。特に、婚姻期間が長く、財産分与の金額が多額となる場合(いわゆる熟年離婚)や、不貞やDVを理由に慰謝料の請求がされているが、事実関係に争いがある場合などは、紛争が長期化しがちです。他にも、養育費を定めるにあたって、基礎となる収入についての考え方が一致しない場合などもあります。
当然と言えば当然ですが、早期に離婚することを第一目標とする場合には、金銭面では多少、譲歩した方が円滑に進むことはその通りです。ただ、この辺りは難しく、お金の問題なのか感情的な問題なのか、その双方が絡み合っているのか、一概には判断できないことも多いため、ある程度時間をかけて双方が主張・立証を行い、落とし所を探っていくことが必要なのではないかと思われるところです。